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「作戦……かぁ」
サヤは自分のいた部屋に入り、柄にもなくノートとペンを取り出し、一生懸命バトルスタイルを考えていた。
「こうやって考えてみると、自分が今まで勢いだけで突っ走ってきたって分かるなぁ……」
手に顎を乗せて、じっと壁を見つめてはペンを走らせるという行為を続けた後、次第にペンの音がしなくなった。
サヤがバトルスタイルを考えている内に、レンも戻ってきた。レンは部屋をノックをしようとしては躊躇い、なかなか部屋に入ろうとしない。
そして、ようやく決心したのか、レンがドアを叩く。返事は返ってこない。
「まだ帰ってきてないのか?」
レンがドアを開けると、イスに座り、ノートを広げてペンを持ったまま寝ているサヤがいた。
レンはサヤを起こさないように近づき、ベッドの上にあった毛布をかけてやる。そして、ノートを見てみる。
そこには、『私のバトルスタイル』と題が書かれ、サヤなりに考えたバトルスタイルが無造作に書き込まれていた。
「サヤなりに頑張ろうとしているんだな……」
朝のサヤの様子からは想像がつかなかったが、多分何かあったのだろう。そこはあまり考えない事にした。
「ん……」
レンが離れようとすると、サヤが目覚めた。サヤはレンの方を振り返ると、ノートをしまいだした。
「レンだったんだ」
「俺じゃ悪いのか?」
「そういう意味じゃないって……それよりさ」
ノートとペンをバッグに入れ、イスから立ち上がり、レンに近寄る。
「ちょっとバトルに付き合ってくれない……かな?」
「今からか?」
虚を突かれたレンが、当惑しながら受け答える。
「うん。私ね、自分らしくバトルしてないって言われて……それで私なりのバトルスタイルを考えてみたの。だけど実戦を積んで、悪い所を見直したいし、ポケモン達にもバトルスタイルを覚えてもらいたいから……ダメ……かな?」
レンはしばらく黙り込み、その後何も言わずに頷いた。
「ありがと、じゃあ外にいるからね」
そう言って、サヤは部屋から出て、レンも後に続いて部屋から出ていった。
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