310人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで……だ」
レンが一旦話しに折り合いをつけ、サヤと面と向かう。サヤも、レンの真剣な面持ちに背筋をピンと張る。
「お前はこのまま、俺と旅をするのか?」
「えっ……」
拍子抜けした声が出たと、サヤ本人も思ったであろう。しばらく両者黙ったままであったが、サヤが口を開く。
「どういう意味?」
「いや、俺がいなくても大丈夫なら、もうお役御免かと思っただけだ」
「レンはどうなの?一緒に旅をするのは……いや?」
そういうわけじゃなくてだな……と、レンは一旦自分自身を落ち着ける。
「俺は……お前が良いと言うなら一緒に旅をしてみたい。まだお前に教えたい事も、お前から学ぶ事もあるかもしれないからな……」
けど……と、レンは言葉を切り、気持ちを整理しつつ再び話し出す。
「俺はお前の気持ちを汲み取ってやることができなかった。お前に、ちゃんと向き合えなかった。だから、俺がいてもいなくても……いや、いないほうが……」
いいんじゃないのか……と言おうとした瞬間、サヤの人差し指がレンの口にあてられた。それ以上は言わないで、というサインだろう。
「気にしないでレン。私がいじけてただけだから。それに、心配かけてごめんなさい」
そう呟くと、またさっきと同じくらいの距離まで離れる。
「じゃあ、これからもよろしく……って事でいいのか?」
「そういう事。改めてよろしくね、レン」
「あぁ、こちらこそ」
レンは差し出された手を握り、固い握手を交わす。月影に映し出された2つの影は、互いに手を握ったまま、ポケモンセンターに入っていった。
「迷いは吹っ切れたようね……」
とある有名テレビ局の控室でタロットカードを広げ、呟くスギナ。
「あなたは強くなる。そしてまた……」
その後、収録の為に呼ばれ、無人となった部屋のテーブルには、正位置の『星』のカードが置かれていた……
最初のコメントを投稿しよう!