ひとつの道

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「それで……だ」 レンが一旦話しに折り合いをつけ、サヤと面と向かう。サヤも、レンの真剣な面持ちに背筋をピンと張る。 「お前はこのまま、俺と旅をするのか?」 「えっ……」 拍子抜けした声が出たと、サヤ本人も思ったであろう。しばらく両者黙ったままであったが、サヤが口を開く。 「どういう意味?」 「いや、俺がいなくても大丈夫なら、もうお役御免かと思っただけだ」 「レンはどうなの?一緒に旅をするのは……いや?」 そういうわけじゃなくてだな……と、レンは一旦自分自身を落ち着ける。 「俺は……お前が良いと言うなら一緒に旅をしてみたい。まだお前に教えたい事も、お前から学ぶ事もあるかもしれないからな……」 けど……と、レンは言葉を切り、気持ちを整理しつつ再び話し出す。 「俺はお前の気持ちを汲み取ってやることができなかった。お前に、ちゃんと向き合えなかった。だから、俺がいてもいなくても……いや、いないほうが……」 いいんじゃないのか……と言おうとした瞬間、サヤの人差し指がレンの口にあてられた。それ以上は言わないで、というサインだろう。 「気にしないでレン。私がいじけてただけだから。それに、心配かけてごめんなさい」 そう呟くと、またさっきと同じくらいの距離まで離れる。 「じゃあ、これからもよろしく……って事でいいのか?」 「そういう事。改めてよろしくね、レン」 「あぁ、こちらこそ」 レンは差し出された手を握り、固い握手を交わす。月影に映し出された2つの影は、互いに手を握ったまま、ポケモンセンターに入っていった。 「迷いは吹っ切れたようね……」 とある有名テレビ局の控室でタロットカードを広げ、呟くスギナ。 「あなたは強くなる。そしてまた……」 その後、収録の為に呼ばれ、無人となった部屋のテーブルには、正位置の『星』のカードが置かれていた……
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