それぞれの誇り

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「ふぁ~……」 朝になり、気持ちよい目覚めを迎えたサヤ、ふと隣のベッドを見てみると、レンが布団をかぶってぐっすりと眠っていた。 サヤは苦笑いを浮かべてレンを見つめた。これからコロシアム戦に挑むというのになんという余裕だろうか…… しばらくして、レンが目を覚ます。大きく伸びをして、ベッドから起き上がった。 「おはよう」 「あぁ……しかしよく寝た……」 「寝過ぎじゃない?これからコロシアムに挑むんだし、少しは特訓とかしないの?」 「まぁ、大丈夫だろ」 そう言って、脱衣場に入っていくレンを見て、サヤはまたため息をついた。 「……ダメか」 「またぁ?」 朝食を済ませて、二人はバルトコロシアムに向かおうとしていたが、何処にあるのか全く見当がつかない。 そもそも、レンは昨日の内に場所を探そうとしていた。しかし、知っている人は愚か、その存在すら知らないという人も少なくなかった。 「こんなに聞いて成果無し……洒落にならないな……」 流石のレンも、途方に暮れるしかなかった。そして、レンが諦めようとした時だった。 「とっとと出てけコノヤロー!」 突然男の怒号が聞こえたかと思うと、一人の男性がいかつい男に抱えられ、そのまま投げ飛ばされた。投げた方の男は刺青を入れ、サングラスをかけ、見るからにヤクザのような風貌だ。そして、そんなヤクザ風の男の一言 「二度とこのバルトコロシアムに顔出すんじゃねぇ!貧弱野郎!」 「「……えっ?」」 二人の心は1つとなった。あれ?ここがバルトコロシアムなの?ヤクザの集会場じゃないの? 「ねぇ……あれ……なのかな?」 「いや、違う。何か悪い夢でも見ているだけだ。試しにサヤ、俺の頬を引っ張ってみろ」 サヤは頷き、レンの頬を引っ張る。 「どうだった?」 「普通に痛かった」 「つまり……」 「現実なのか……これ……」 レンはバルトコロシアムの入り口を見たまま、しばらく動けなかった。
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