それぞれの誇り

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さて、あのヤクザ風の男が出てきたドアの前に立ち、ドアをノックする。 「……」 返事が無い。今度はもっと強くノックしてみるも、やはり返事が無い。どうしたものかと、レンが首をひねっていると 「じゃーかーしーわボケェ!」 先程のいかつい兄ちゃんがドアを蹴り開けた。ドアの前に立っていたレンは、言わずもがな吹き飛ばされる。 「な……何なんだ?」 「それはこっちのセリフじゃい!お前何者じゃあ!」 レンは後頭部を押さえて立ち上がり、いかつい兄ちゃんと向き合う。 「俺はレンって言います。コロシアムに挑戦したくて来ました」 男はレンをじっと見つめた後、急に冷静な口調で話し出した。 「兄ちゃんよぉ……アポ、取ったか?」 「アポ?いいえ」 男はため息をついてレンを見る。 「あんな、こういう場所では事前にいつ挑戦するとかっていう約束をしなきゃならん。それが常識や……」 「はぁ……」 「まぁ、うちはそんなに見つかんないし、バトル見れるなら大歓迎やからいいけど……次は気ぃ付けぇや」 「はい……」 「じゃあちっと申し込みしてきたる。そこで待っててくれ」 と言うと、男はドアを閉めて行ってしまった。 「始めてだ……ヤクザに説教されるのは……」 「なんか……思ってたほど怪しくはない見たいね」 レンは頷き、ボソリと呟く。 「……次はちゃんとアポ取ろ……」
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