それぞれの誇り

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「まずは前哨戦か……いくか」 レンはリングの上に上がる。トレーナーもリングの上に立つという事は、攻撃がトレーナーに当たらないように配慮しなければならない……という事だろうか? と、考えているうちに、リングに一人のトレーナーが上がってきた。よく見ると、ベルトには1つしかモンスターボールが着いていない。 「あんたが先鋒か?」 「先鋒って呼ばれ方は気に食わないが……そう考えてくれて結構だ」 そう言うと、トレーナーがボールを構える。レンも同じように、ボールを取り出す。 「こい!アーボック!」 「頼むぞ、グレイシア!」 二人がバトルを繰り広げるなか、観戦するサヤにジンが近づいてきた。 「あのチャレンジャー……」 「えっ……レンの事ですか?」 急に隣にきたジンに驚くも、表情に出さずに、リングを見つめながら答える。 「そうそう、そいつだ」 「その……レンがどうかしたんですか?」 「あいつはかなり強いだろ?」 「えぇ……まぁ……」 そう答えるも、ジンはリングを凝視していて、果たして話をする気があるのか疑いたくなる。 「あの……」 「うん?」 「あのジンって人、どういう人なんですか?」 「そうだな……」 サヤは隣の人に聞いてみると、その人は首を捻り、少しずつ話し出した。 「ジンは……なんというか……俺達にとっては救世主のようなもんだな」 「救世主……」 「俺達はな、見た目とかそういう理由で世間から嫌われた荒くれ者の集まりだった……嫌われ者らしく悪さもたんまりとしてきた……」 しかし……と、一旦話をきり、咳払いして話を続ける。 「奴が……ジンが現れた。あいつは別に嫌われ者でもない、だがここにきた。俺達には分からなかった。何故、あいつが俺達の所に来たのか……奇妙だと思ったね、最初は……」 「最初は?」 サヤは話を聞きながら、よくまぁ近くに本人がいながらこんなぶっちゃけ話ができるものだと、ある意味で感心していた。
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