それぞれの誇り

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「しばらくして、ジンは急に姿を見せなくなった。まぁ、厄介払いができてよかったと思っていたがな……だが数週間後、ジンはまた現れた。コロシアムマスターという肩書きを持ってな……」 「それで……ここがバルトコロシアムに?」 「ジンは俺達を、コロシアムのトレーナーとして雇ってくれた。あいつのおかげで俺達は社会復帰できた。だからあいつは俺達にとって救世主なんだよ」 「なるほど……」 サヤは、リングで行われているバトルに夢中のジンをちらっと見た後、視線をリングに戻す。 「毒針!」 「シャドーボール!」 アーボックの毒針を、シャドーボールで相殺するグレイシア。なかなか熱いバトルが繰り広げられている。 「巻き付くから毒々の牙!」 「凍える風で動きを鈍らせろ!」 その長い体を活かして巻き付こうとするも、凍える風で動きが遅くなり、グレイシアはなんなりと交わす。 「ヘドロ爆弾!」 「ミラーコート!」 放たれたヘドロ爆弾は、不思議なバリアに弾かれ、そのままアーボックに直撃する。 「負けるなアーボック!」 「冷凍ビーム!」 起き上がろうとするアーボックにだめ押しの冷凍ビームが決まり、アーボックは戦闘不能となる。 「それまで!勝者、チャレンジャー!」 リングの周りからは、割れんばかりの歓声が響く。 そんな中、グレイシアを回復マシーンにかけていると、サヤが近づいてきた。 「初戦突破、お疲れ様!」 「あぁ、この調子で一気に突っ走ってやるさ」 「あれ~?いつになくレンが燃えてる~」 「そりゃ……」 と、後ろの大観衆を振り返り、ため息をつく。 「こんな環境で燃えない方がおかしいって」 「アハハ!確かにそうだね」 サヤも軽く辺りを見渡し、視線を前に戻す。 「でも、油断は禁物……だよ」 「分かってるつもりだ」 レンとサヤは互いに顔を見合わせ、お互いに握りこぶしを作り、それを軽くぶつけた。
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