それぞれの誇り

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「流石にここまで勝ち抜いてきただけはある……ザングース!あれでいくぞ!」 「ザンッ!」 ザングースは短く吠えると、ストライクから離れ、構えの体制をとる。 「スト?」 「気を抜くな!シザークロスで攻め込め!」 レンの指示でストライクが迫る瞬間、ジンがニヤリと笑みを浮かべる。 「かかったな!影分身だ!」 「何だと!!」 ストライクのシザークロスは空を切り、その間にストライクを取り囲むようにザングースの姿が現れる。 「ストッ!?」 突然現れた数多ものザングースに、ストライクもたじろぐ。 「落ち着けストライク!燕返しだ!」 「ストッ!」 燕返しは必ず命中する技であり、ザングースがいかに影分身しようとも、ダメージを与えられる打開策でもある。実際、ストライクの一撃は本物のザングースを捉えた……はずだった。 「馬鹿な!?」 切りつけたはずのザングースが、まるで煙のように消えてしまったのだ。そして、ストライクの真後ろに、ザングースが立っている。 「ブレイククロー!」 「シザークロス!」 一瞬の差であった。ザングースの爪の軌跡が、ストライクの背を捉える。ブレイククローをまともに食らい、ストライクはリングに倒れる。 「勝者、ジ……」 「待て」 勝者宣言をしようとした審判を、ジンが止めた。どういう訳か、レンも諦めていないようである。 「あのストライクは……まだやれる」 ジンの言葉通り、ストライクは立ち上がり、試合続行を意味するファイティング・ポーズをとる。だが、ストライクの息は上がり、既に限界は近い。 「ストッ!」 ストライクはレンを見て、何かを伝えようとしている。レンもまた、ストライクの意思を汲み取ったように頷く。 「いくぜストライク……これが俺達の……ラストアタックだ!」 「ストッ!」
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