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『目覚めて! 氷水! 私達の力が失われるその前に! 早く!』
叫んでいるのは、真紅の絹地に花の柄や、様々な飾りが縫いとめられた着物を着た、幼い少女。
その声は悲痛さに溢れている。
どうしてそんなに泣きそうな声なの……?
どうして……?
少女はだんだんと遠ざかっていく。
私が遠ざかっているのかもしれないが……
「また……この声……」
私は、そんな叫び声がここ二、三日の目覚まし代わりになっている。
ゆっくりと体を起こし、外を見る。
日はまだ昇りきっていない。
時計を見ると、時間は五時。
げ、まだそんな時間なの?
寝直そうかなあ……?
私はそんな叫び声がこれから、始まる出来事の始まりだなんて、夢にも思わなかった。
寝直すのは止めて、そのまま布団の中でぼんやりしていた。
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