第一章 始まり

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一応本屋には行ったが、特に欲しい本はなかった。 『帰ろうかな……』 そう思っているのだか、何と無くそんな気にはなれず、本屋の中をうろうろしていた。 結局家に帰ろうとしたのは、夕方だった。 お腹空いたなあ…… 結局、昼御飯食べなかったしなあ…… 神社に帰る途中、また声が聞こえた。 朝よりも声は大きい。 しかし、声の主は変わらない。 高い、澄んだ女の子の声。 『氷水! 気を付けて! 危険が迫ってる!』 危険……? 声が言い終わる前に私は僅かに身構える。 その声が言い終わると同時に、上から何か落ちて来た。 落ちて来たそれは人では無かった。 猿の様な…… 形容しにくい…… 「お前龍だな?」 とても、大きな化け物だった。 私は、震えて声が出なかった。 脇目もふらず、ただ逃げ出した。 走りながら考える。 龍って何? それに私が龍とあいつは呼んだ。 どうして私なの? 助けて…… 急に涙が溢れてきそうになる。 しかし、泣く訳にはいかなかった。 泣いたら目の前がぼやけてしまう。 泣いたら…… だから泣かない。 もう泣かないと決めたんだ……!! なら逃げ延びてやる……!!
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