土の香

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むせ返るような土の香にうんざりしながら、一日を何とか乗り切り、やっとで放課後。 「さぁ、早く雑貨屋へ向かいましょう?」 満面の笑みで私が言うと金木犀が立ち上がった。雪夜は私の声に気付いてすらいない。何故ならば6限目から夢の中だから。 「ねぇ、金木犀?」 私は雪夜を見つめたまま金木犀に話し掛ける。 「なんだい?桜草?」 金木犀も雪夜を見つめたまま返事をする。 「私は頑張って起きていたわ。こんなに雨が降っているのによ。偉いわよね?」 「とっても偉いと思うよ。」 金木犀の言葉に満足して私は続ける。 「ありがとう。それでね、言わなくても通じてるだろうけど、雪夜にアレをやってもいいかしら?」 横目で金木犀が頷くのが見えた。 「いいと思うよ。自業自得だろうし。」 私と金木犀はニィっと笑って雪夜の耳元へ口を近付ける。 『せーの』の合図で大声を出す。 驚いたように叫び、跳び起きて、雪夜は私達を睨み付ける。 「ご機嫌よう、雪夜。やっとでお目覚めね、お寝坊さん。」 唄うように言って、教室を出るため歩き出す。金木犀も笑いながら私の後に続く。 「加減ってものを知らないのか?」 呟きながら小走りで雪夜が追い付く。 外はまだ雨。うんざりして私は溜息をつく。 「そういえば、桜雪は何故、雨がこんなにも嫌いなの?」 金木犀が思い付いたように尋ねる。 私は空を一度だけ見上げ、金木犀の問いに答える。 「雨の日はむせ返るような土の香で息苦しいでしょう?」
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