黄昏の月

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いつもの時間に目を醒ました僕は寝室のカーテンを開けた。 秋晴れという言葉に相応しく、青い空を伺うことができる。 雪夜が大変だ 寒いであろう外を見つめ、僕は思う。 「だって、寒い日には布団から出たくないじゃない。」 昔、晴れた日に遅刻した理由を聞くと桜草はそう答えていた。 この寒空の中、桜草の部屋の前で雪夜はどれくらいの時を過ごすのだろうか。 「金木犀、朝食の準備ができたよ。」 僕が着替え終わると、部屋の扉が開き、兄が顔を覗かせた。 「兄さん、今朝も早いね。」 兄の言葉に僕は笑って応える。 僕自身もわりと早起きの方なのだが、まだ一度も彼の寝た姿を見たことがない。 僕よりも遅く寝ているのに、僕が起きると朝食まで準備している。そして、一緒の時間に家を出るのだ。 「兄さん、ちゃんと睡眠はとってる?」 過去に一度、心配になって聞いたことがあった。 「僕はスーパーマンだからね。眠らなくても大丈夫なんだよ。」 笑って言う兄の顔を見つめ、その時は有り得ないことだと思っていた。だが最近はあながち嘘ではないかもしれないと、真剣に頭を悩ませている。 朝食を食べ終わり、兄と共に家を出た。 やはり外は寒く、僕は雪夜を不憫に思った。
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