黄昏の月

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僕の予想通り、1限目が始まっても二人は学校に現れない。 しばらくして、扉が開くと、寒そうに頬を赤くした雪夜と、不機嫌な桜草が教室に入ってきた。 「すみません、遅れました。」 教師は雪夜の言葉に一度頷き、授業を続ける。 桜草が座るのを見届けてから、隣の雪夜に話し掛ける。 「今日はいつにも増して、不機嫌だね。どうしたんだい?」 「昨日、連絡があったらしいんだ。」 それで理解し、僕達は授業に戻る。 桜草と彼女の父親は仲が悪く、連絡のあった次の日は特別に機嫌が悪い。 複雑な理由があるらしいけど、僕はあまりよく知らない。 確か、実の父親ではないという話だった。 「金木犀、後でノート見せてくれ。」 雪夜の言葉に僕は頷く。 授業はあと五分で終わってしまう。 黒板に書かれた膨大な量の文字を板書するには、時間が足りないだろう。 授業は終わり、雪夜のノートには僕の半分の量の文章しか書かれていなかった。 桜草のノートにはきっと何も書かれていないのだろう。
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