第三章~幸せ~

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「志弦、帰ろ」 いつものように、流唯が教室へと迎えに来る。 「う、うん」 学校の人気者である彼を、独り占めした生徒として、志弦はクラスの女生徒から…いや、全校生徒の女生徒と言っても過言ではない。…その彼女達から、今日も白い目線を向けられていた。 あの日から、ずっとである…。その状況は、今も変わる事はなかった。 志弦はその嫉妬心から早く逃れたくて、教室から廊下へと急いで飛び出した。 「ちょっと、志弦!鞄っ、鞄忘れてる!!」 慌てて出てきた為か、手にあるはずのいつもの荷物がスッポリと抜けていた。 その光景を眺めていた流唯は、思わず苦笑する。 「志弦のドジなとこは、一生治りそうにないな」 付き合い始めておよそ数十日――。 この期間の間に見てきた志弦のドジさ加減には、流唯自身も半ば諦めていた。 「そんな~…」 「先輩、こんな子ですけど宜しくお願いしますね」 「わかってます」 「…………」 彩華は急に静かになると、その口元を流唯の耳へとそっと近付けた。 「…ちょっと周りから反感買っちゃってるみたいで…」 「…………」 「本人は気にしてないように見せてるけど、ゃっぱり――」 彩華は顔を歪めた。やはり、親友として心配しているのだろう。そう察すると、流唯は優しい眼差しで――                                               「…ゎかってる」                                               そう、小さく呟いた。 「…大丈夫みたい」 「ぇ?」 「先輩のその顔見て、安心しました。あの子の事、ちゃんと大事にしてくれそうだもん」 彩華は、恥ずかしそうに笑った。 「優しいんだね」 「そ、そんな事――」 「大丈夫、幸せにするよ」 「…はぃ」                                               流唯は、志弦をその目に映すと、はっきりと頷いてみせた。
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