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二人は、裏庭の広場へとやってきた。生徒達が少しでも快適に過ごせるようにと、校長が考えた案だった。
今では、ちょっとした生徒達の憩いの場になっていて、好評のあるスポットとなっている。
「…………」
「ぇっと…」
「…………」
「…大丈夫?」
余りの緊張で押し黙ったままの彼女に、流唯は声を掛ける。呼び出した張本人は自分だという事実と、心配してくれている彼の優しさに、意を決し、握られている右手の中の手紙を差し出した。
「こ、これ…読んで下さい!!」
ようやく搾り出したその言葉と同時に、両手を前へと突き出す。左右の足がガクガク震え、止まらない。その顔は真っ赤に染まり、指先は小刻みに痺れ、恥ずかしさの余り、うつ向いてしまう。
自分の両手から感触がなくなったのと同じく、すぐにその場を離れようと思っていた彼女に、流唯は言った。
「…ここで読んでも良い?」
「え?」
まさか、読んでくれるかさえも不安だった彼女にとって、その言葉は飛び上がりたい程、嬉しいものだった。
「はっ、はい!」
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