思い付き書きかけ小説

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 僕の仕事を一言で説明するのは難しい。それでも敢えて簡単に説明するならば、僕の仕事は林檎を林檎と認識させる事だ。何を言っているのかと思われるだろうが、実際そうなのだから仕方無い。    例えば一つの林檎を思い浮かべて欲しい、その林檎を林檎という単語を使わずに林檎だと認識出来るように説明して欲しい。そしてよく考えて欲しい、それが本当に林檎とそうで無い物を識別出来るのかと。  その説明ではトマトと何が違うのか、その説明ではさくらんぼと何が違うのか、その説明では青林檎は林檎と識別出来るのかを。  多分そう簡単にはいかないと思う、簡単にそれが出来るなら僕の仕事は無くなってしまう。    ならばと、林檎の厳密な形状を数値にすれば良いと考えるだろうが、それでは二つの林檎があった場合、右の林檎の数値を認識したら、左の林檎は林檎では無いと識別する可能性がある。    ああそうだ、今更ながらすっかり忘れていた。何に識別させているのかを。それはロボットだ。それも人型の。    林檎の話に戻ろう。中にはこういう奴がいる。 「林檎にバーコードを貼り付けてそれを林檎とすれば良い」  それでは本末転倒だ。そんな事をいう奴は、おでこに林檎のバーコードを貼り付けて、そいつが林檎だとロボットに識別させてやる。  ロボットというのは加減を知らない。曖昧という状態が無いのだ、だから僕は本当に毎日頭を悩ませている。
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