流れ流され着いたよ魔界

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「では、暫くに……」  そう言って、最後の逃げ道を閉ざしてサテナが部屋を出ていく。  え? 何で助けを求めないのかって? 馬鹿野郎。俺の前の巨漢を見てから言えよ?  絶対逃がさないって体全体で表現してるから。 「くくく、やっと二人きりになれたな、小僧ぉ~……」  ゆらりと空間が歪む様に見える魔力の流れを体から立ち昇らせながら、ゆっくりと立ち上がるサテナの親父さん。  おお、二人きりという言葉に此処まで嫌悪感を抱く日がくるとは思わなかった。 「ふん。わ、私も鬼ではない……。騙されていると言えど仮にも娘が惚れた相手だ」  鼻息荒く立ち上がりながらも、それを抑えて余裕のあるそぶりを見せる親父さん。 さっきまで、思わず冷や汗を流すまでにあからさまだった事に対する面目躍如なのだろう。 「以後、二度と娘に近付ずかないというのならば今日の所は……」 「あいつだけは絶対に離さない。寝言は寝ていえ糞親父」  流石にそれだけは出来ない。あいつをあんなに悲しませるのは人生で一度だけで充分だ。  それが俺の本心で、本当ならもう少しぐらい口汚く罵ってやろうと思ったんだけど、それは余りにも子供っぽい上にサテナにも面目ないと思い、何とかオブラートに包んだ言葉を選んで口から出してみた。 「くおぉっっ、小僧貴様ぁぁっ~!? 何気に良い事を言っているのに、その言葉遣いで全てが台なしじゃ馬鹿者っ!!」  うおっと、折角のチャンスだったというのに敬称に余計な言葉付けたのが徒になったみたいだ。  よし気を取り直して……。 「寝言は寝ていえ、糞」 「それじゃあただの悪口だろうがーー!!」  しまった。此処は逆だったのか。
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