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サテナの親父さんのこちらをモロにぶっ殺したい、なんて叫んでいる視線が俺を捉えて離さない。
ああ。こいつは誰に言われずとも分かる。
うん、アウトだ。
「小僧っ……、貴様には教育というものが行き届いてないようだなぁ~……!!」
もはや、地獄の化身になってしまったサテナの親父さん。
てか、教育が行き届いてないだって?
なめるなよ。親父の教育はこうして呪いの様に生きてるぞ!
「来世で悔いろぉっ、若造がぁぁっーー!!」
「…………!」
轟音を唸らせる親父さんの右拳が俺を目掛けて飛んでくる。型も何もあったもんじゃないただの打ち下ろしなれど、その速度は獣のそれで。
ついでに俺の足は動かない。
拳が胸へと当たる。辺りの空気を引き裂きながら俺へと放たれたその一撃は……。
「……あれ?」
俺の体にめり込んだ。いや、めり込んだのだけれど……、それだけだった。
「な、何ぃ……?」
俺が一歩下がると、親父さんの拳はすうと離れる。
しかしその拳は綺麗なもので、予想していた俺の血や肉辺なんか一切ついてやしない。
……ああ、なるほどな?
「クヒッ、クッカカカ……!」
「…………!?」
思わず笑いが漏れてしまう。
なんだ、この人。こんな形(なり)して本当に男親と婿のやり取りをやりたがってたのかよ?
いやいや、流石は魔界の悪魔なだけはあるな。演技であるにも関わらず、こちとら死を覚悟するぐらいにビビっちまったじゃねぇか。
「カカッ……。なら、次は俺の番だよなぁ……?」
拳を引く。
決して脇は開かずに、腰の回転から爪先の回転までを最大限に活用。
それだけを意識していれば、ド素人でもそれなりのものは撃てるのだから。
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