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「はぁ~…、ビビった……」
俺の右が親父さんを打ち倒してから数分。慌ただしい医療団を見送って、安堵の溜め息を一つ。
父親と婿の一幕の後、壁の方にまで吹き飛んで中々起きて来ない親父さんを心配して近寄ってみると、案の定、泡を噴いて動かない男を発見し、急いで人を呼んだ。
まあ、運ばれていく担架の上で俺に向かって罵詈雑言を叫びまくっていたのだから、そこまで心配する程じゃあないんだけどな?
「うん……?」
そういえば何だか静かだな?
てっきりサテナが事の顛末を聞きにくると思っていたんだけれど。
「……失礼します」
一言かけられて振り向くと、そこにいたのはこの城の住人で初めに顔を合わせた女性。
え、と、確かエルトナだったか?
「サテナ御嬢様から御伝言がございます」
そう言って、エルトナとかいう女性は、心地の良いソファーに偉そうな態度で腰掛ける俺の隣まで来て止まる。
「伝言……?」
……おっと、何だ? 今よく分からないけど、いきなり背中に冷気が通った様な感覚が……。
あれ? 何だっけ、この感覚?
「はい。御嬢様はとある用事を済ませるために……」
あれ、あれれ? 何だったかな、絶対に忘れちゃいけない事だったはずなのに、確か俺の命に関わるレベルの…………はっ!?
「暫く城を空けるので、その間はこちらを我が家と思い過ごして欲しい、との事です……」
ああ、これこれ。無駄にハズレのない百発百中の悪い予感だ。
うわ、尋常じゃないな、この孤立無援。
「…………」
こめかみに手を当てて、暫し考える。
いや、此処にいるしか選択肢はないのは分かってるけどな?
外なんておっかな過ぎて、死ぬぎりぎりまで出たくない。
「その間は私が貴方様の世話をする様、申し付けられました『エルトナ=パウルテイル』と申します。以後、お好きな様にお使い下さい……」
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