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主の褒め言葉に毅然とした態度で返すエルトナ。
それとは対照的にサテナは待っていたと言わんばかりに、その書類の口を開く。
「しかし、全く中央の情報収集は恐ろしいのう」
袋を爪で裂きながら、楽しげに一人語る。
「もしやとは思うたが、まさか本当に来たばかりであるルシファの情報がもう備わっているとは思わなんだ……」
サテナは開いた書類の袋を興味深げに一瞥する。
―魔界中央情報局
魔界に存在する、北方、南方、西方、東方そして中央。
その中央にある何処の勢力にも属さない独立機関の名が『魔界中央情報局』。
創設者は史上最強の魔族と謳われる『創造者』だと言われ、何人足りとも侵略する事が敵わない絶対不可侵な機関。
その情報収集能力は、魔界を創ったのはこの情報局なのではないかと言われる程に膨大である。
また、不可侵なれど、それが保有している情報は、対外に対して閲覧を許している。
「なんじゃと……!?」
袋の中に入っていた書類を眺めたサテナが驚きの声を上げる。
書類を持つ手が震える程の驚きに包まれた彼女を見て、エルトナが慌ててサテナの側に寄る。
「如何なされましたか、御嬢様? 書類に何やら不備が……」
エルトナのサテナを気遣う言葉。
しかし、サテナはそれに言葉を返しはせずに、神妙な顔をして席を立つ。
「……少し、確かめねばならぬ事が出来たみたいよのう」
◆◆◆
「何だこりゃあ……?」
サテナが旅立った要因と説明された書類を眺めて、まず驚いたのは、それが自分の調査書だった事。
続いて、言葉に出した通り、別の意味で驚き呆れたのはその内容。
「UNKNOWN、UNKNOWN、UNKNOWN……。 上から下まで分かりません、ってか?」
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