バルムント包囲網

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 隅から隅。小姑の様な細やかさで何度読み直してみても、俺の名前の欄以外の部分には分かりませんとの訴えしか見て取れない。  これを調査書と呼んだのなら、この世にある全ての調査書を全知全能の書と改名してやらなきゃならない。 「……サテナはこれを書いた奴を叩きのめしに行ったのか?」  それが正解なら、サテナが俺を置いて出掛けた理由にも納得がいく。  しかし、俺の予測は外れたらしく、エルトナは首を横に振ってしまう。 「いえ、御嬢様はその様な野蛮な真似をしに中央へ行かれた訳ではございません」  なるほど、サテナは中央という所に行ったのか、と取り敢えず彼女の行き先を認識し、エルトナの話を促す。 「そちらに調査書最後に書かれている備考の欄を御覧下さい」  そう言われて俺は意味を成していないその紙切れをめくって、言われた4枚目の紙を眺める。 「……機密レベルAデハ閲覧ヲ許可セズ」  見るとそこに書かれていたのは、何とも事務的な一行の短文。 しかし、こっちの事情など全く分からない俺にここから何かを判断する事は出来ず、視線で彼女に説明を求める。 「……そういえば、ルシファ様はこちらの出ではございませんでしたね」  失礼致しました、と頭を下げられる俺。 「こちらに書かれている情報局という機関は、実力や地位、または立場といったものに応じ、貯蔵している情報を提示してくださるシステムとなっております」  そりゃあ便利な機構だ、と思わず唸ってしまう。  ふむ、何だかんだ魔界って所は人間(あっち)の認識と違って大分進んだ文化を築いているようだな? 「そして、このバルムント家が持つ機密レベルは、中央を支配する魔帝にこそ及ばないものの、それでも大抵の情報は難無く手に入れる事の出来る上級位なものです」
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