家族の一日、エッセンスとして俺

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「お、御早うございますアスモデウト様っ!」 「本日も良い御日柄ですね、アスモデウト様っ!!」 「………………」  様々な魔族の方々の親切で打算的な挨拶が俺の心をささくれさせるお昼頃。 「……流石は御嬢様に選ばれた御方です、ルシファ様。一日で城の者、全てがBクラス以上の魔族であるにも関わらず、ここまで畏れられるとは……真に感服致しました」  そう言って、心底真面目に感心するエルトナ。 それを見て、本当に卑怯な奴だと思う。……全く、こんなに純粋な気持ちで言われたら嫌味の一つも返せやしない。  事の発端というならば、それは俺がこの城に来た初めの日から、という事になるだろう。  この城の主であり、魔界でも十指に入るであろう親父さんをノックアウトしたという噂は、瞬く間に城中を駆け巡った。 しかし、それだけならば城の皆も半信半疑。魔界で最上位に位置する親父さんが負けるなんて事を普通に信じられる奴なんてそうはいない。 事実、親父さんが倒れたのは単にごっこ遊びだったからだし。  そんな時に、自爆の名手であるこの俺、ルシファ=アスモデウトはそこに巨大魚の破砕という、話に聞くと相当にとんでもない事を投げ込んでしまい、その結果、昔懐かしい邪神のごとき扱いをものにしてしまったのだ。 「……無念」  まあこれならば無闇やたらに襲われはしないだろうと、仕方なく俺らしくない前向きな考えで、今日も今日とてタダ飯ぐらい…… 「ああっ、見つけたわ「駄ぁぁ目ぇぇぇだぁぁぁっっーー、ファぁああーーーー!!」キャアァァッ……!?」  俺の前を駆け抜けて行ったニ陣の風。 一人が俺の前に駆けて来て何か言葉を発した途端、もう一人がそれを掻っ攫う様に駆け抜けて行った。  今、目の前にした事を説明すると、まあ、こういった感じなのだけれど……。 「……何だ?」 「……申し訳ございませんでした」  俺の呟きに答えたのは後ろに付いていたエルトナ。振り返ると何故か彼女は申し訳なさそうな表情で溜め息をついていた。
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