流れ流され着いたよ魔界

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 ……やばい、こいつはやばい。  四天王?ゼルグ?そんなのはこの広い世の中では単なる有象無象の一人でしかない、と一瞬の内に悟らさせられてしまうこの存在感。  溢れる魔力は澱みない純粋な黒色、というべきか。 こんな魔力の質がサテナ以外に存在するという事実に、驚愕が引くことを忘れて俺の心に響き続ける。 「久しぶりじゃな、父上」 「おおっ、やっと帰って来おったか我が娘よ!」  サテナがどれだけの時間を人間界で過ごしていたのかは知らないが、父親としてその時間はそれなりに長く感じるものだったのだろう。  サテナの存在を確認した途端、化け物然としていた前に座る化け物の顔が父親のそれへと変わる。 「それにしても、急に帰って来たと思えばいきなり……」  そう言って俺の方を一瞥するサテナの親父さん。  ふぅ、危ない危ない……。 もし親父さんの力が、初めて会った時の叔父さんに比べれば何て事ない、という事に気付かなければ、今のあの腑抜けた顔にすら恐怖を感じる所だった。 「ふふっ、妾も父上を驚かそう、等とという気はなかったのじゃがな? 何、一目惚れなるものであったからのう。妾にもどうにも出来ぬ問題であった……」  そんな好意的な父親にサテナも会話を楽しんでいる。  まあ、隣で一目惚れされたなんて聞かされている俺は恥ずかしさで一杯なんだけれど。 「と、すまぬ。主を紹介するのを忘れておったな?」  久しぶりの会話を楽しんでいたのだろうに、俺の事を気にしてそう話をふってくるサテナ。  ん~、俺としてはこのまま、何事もなかったかの様に此処を立ち去っても良かったのだけどね? 「父上、この者の名は『ルシファ=アスモデウト』。妾の番いとなってくれる最愛の男よ」  サテナに堂々たる紹介。 それに、どうも、という気持ちを込め頭を下げる。 「……う、うむ。中々に素晴らしい名前じゃないか? ……こう、世界の全てを憎む様な……」  俺は悪神か。
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