始まりの歯車が回り始める時

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 その光景を異質と現さずに何と呼べばいいのだろうか?  辺り一面に広がる荒野。草木が僅かにしか生えず、まるで弱肉強食を現すかのようなその荒涼とした大地の直ぐ隣、そこにそびえるのは、まるで正反対の様子を見せる青々と茂る生命力溢れる山々。  そんな差異の激しい二つの土地が連なっているその現実。普通の人間界ならば不可解極まりない不自然と言われてもおかしくない自然の姿。 「ねぇ~、ちょっと待ってよ~!」  そんな山間から一つの影が、その前方を飛ぶ影を追い掛ける様に飛び上がってくる。  後ろの影に呼び止められた前方の影は、そのたなびく髪をかき上げて、仕方ないとばかりに後方へと振り向く。 「もう、今度は何処に行ってたのかしら~?」 「はひひ……。ちょっと見たことのないへんてこ可愛い生き物が歩いてたから?」  そう言って前で待っていた影に追い付くと、後ろにいた影はじゃれつく様に前の影の人影に抱きつく。 「ん~、ごめんなさい! でっもね~、そう言ってもなんだかんだ待っていてくれるお姉ちゃんが僕は大好きですっ!」  飛んできた勢いのまま抱き着く少女に「きゃっ」という可愛らしい悲鳴を上げる、彼女にお姉さんと呼ばれた女性。 「よーし、じゃあお姉ちゃんも帰りたがってる事だし、全身全霊最大戦速で、レッツゴー!!」  そう言って女性から離れるや否や、空を翔ける鳥類の如き勢いで飛んで行く少女。 「ああ、もう……。あんまり急いでまた怪鳥さんに……」  そんなとんでもない勢いで飛んで行った少女に注意を呼び掛けようとするも、お姉さんの方を見ながら飛んでいた少女は女性の心配通りに、己の何倍もの大きさを誇る巨大な怪鳥にぶつかって吹き飛ばされる。 「あらあら……」  そうして痛いと叫びながら自分の方へと泣きながら飛んでくる少女に向けて、彼女は優しげな微笑みを浮かべるのだった。
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