流れ流され着いたよ魔界

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 相変わらず綺麗な手だな? 俺のゴツゴツの手とは大違……、あ、俺の手新品だったっけ? 「まあ、そんな訳だから、ちょっと魔術は使うのには耐えられないな」  多分気持ち悪くなっちゃう。 「そのような些細な事、何の問題もありはせぬ……! 妾は主が隣にいてくれるだけで他には何も望まぬ……」  サテナの心がジンと奮え、 「…………」  親父さんの笑顔のプレッシャーに心の臓がバックバク。 俺の心臓大丈夫かな? 「……済まない、サテナ。少し席を外してくれないか?」  親父様からの素敵な提案。  怒りは最高潮。実力は申し分なさそうだし、俺が生き残るにはぶっ殺される要素が多過ぎる。  ああ、でも……。 「少し、とな? 一体どうしたと言うのかの父上?」  その頼みに疑問を抱いたサテナがその理由を尋ねる。 「いや、何、自分の娘が気に入った男なのだ。少し、語り合いたいと思ってな?」  お父さん、語り合いたいというのにその隆起した丸太の様な腕を強調するのは可笑しいと思います。 「……むう、それならば仕方がないのう…! 確かに書物でもそういった語らいは付き物だと述べられておったからのう……」  サテナ惜しいぞ? 確かに似ている状況ではあるかもしれないけれど今から始まるのは一方的な虐殺だ。 「あっはっは、そうそう語らいだ! 娘に寄り付く男を相手にするという男親の宿命だ!」  ああ、本当に嬉しそうだな親父さん。  ただいくらなんでも指を鳴らして青筋立てるのはあからさま過ぎやしませんか? 「ルシファ……」  その見事な筋肉から、恐怖で視線が外せなくなっている俺の肩にサテナの手が置かれる。 「良き報告を待っておるぞ……?」  うん、多分俺の凶報が届けられると思うぞ?
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