120人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは、薫子が12の誕生日を迎えた秋の事だった。
私は、可愛い薫子に誕生日の祝いの品をやるために、薫子の家に向かっている道中だった。
ドン!!!と肩に何かがぶつかって私は倒れてしまった。
今の季節は秋だというのにも関わらず、桜の香りがした。
柔らかく、かぐわしいその香りに、私は転んだ事も忘れしばらく酔っていた。
すると、その桜の香りの主であろう女は…
「…申し訳ありません!
わたくしったら、急いでいたあまりに…」
そう言って、私の荷物を拾い私に手渡した。
長く、艶やかな黒髪を持つ瞳の澄んだ女だった。
一瞬他人かと思った。…が、その澄んだ丸い瞳は私の知っているものだった。
「…か…おる…こ?」
「ハイ!
オジサマ覚えていて下さったのですね?」
最初のコメントを投稿しよう!