120人が本棚に入れています
本棚に追加
「…可愛い薫子を…
忘れるはずがないじゃないか…。」
そう言ったが、この時の私の目に写っていたのは薫子であって薫子ではなかった。
「…薫子は嬉しゅうございます。」
長く艶のある黒髪を綺麗に結って、
ほっそりと白い首やその肌は色香を漂わせている。
華奢な体だが、丸みを帯びて女性の線が出来てきた薫子。
まだあどけなさの残るその表情だけが、私を現実に引き戻した。
「…けれどもおじ様ったら、薫子にちっとも会いにきてくださらないんですもの。」
「…あぁ、すまなかったよ薫子。
ここ数年私も色々忙しくてね。」
私が薫子と会ったのは、もう何年前の事になるだろうか…?
最初のコメントを投稿しよう!