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「別れよう。」
…何の気なしに言ってみた。
ただ、それだけ。
「…いいよ。」
帰ってきた返事は意外なものだった。
「どうして止めたりしないの?
私の事、嫌いになった?」
「なってないけど‥止めたって無駄だろ?」…さすが。
よくわかってる。
私はお気に入りのマグでコーヒーを飲んでいて、
貴方はその隣で本を読んでいた。
貴方は手でアゴのラインをなぞりながら、酷く真面目な顔で本を読んでいたよね。
それは貴方の真剣になった時の癖。
そして、それは…
私達がお互い長く一緒に居たというこの上ない証。
唇を合わせれば…貴方はいつだってタバコの味がした。
それは、コーヒーが嫌いな貴方が
私のキスがコーヒーの味がすると言ってから。
「タバコでも吸いはじめたら?」
…という私のカラカイにたいして、
本当に吸いはじめた。
「…で?」
「…?」
「本当に別れるの?」
そう言う貴方が
なんとも愛おしくて
私はやっぱり
「気が変わった」
そう言って笑った。
☆End☆
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