流れる雲のごとく

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人が居ることに更に安心感を覚え、足を運ぶ。 男は長い黒髪を、低い位置で結んでいるようだ。 スポーツウエア姿で、一心に木刀を振っている。 碧(あお)は先程までの緊張を忘れたかの様に、歩みを止めその男の姿を目で追っていた。 「きれい」 小さく呟いていた。 男は一人、見えない誰かと闘っているかの様に、木刀をふるう。 華麗な舞踏の様に、右へ左へと流れる様に舞って行く。 流れる汗が動きと共に四方に飛び、照明に照らされキラキラと輝いては消える。 「きれい」 無意識に再び言葉が、碧の口をついて零(こぼ)れた。  
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