流れる雲のごとく

22/26
2981人が本棚に入れています
本棚に追加
/981ページ
あと少し、あと少しで公園が見える。 あそこを突っ切れば、マンションにたどり着く。 怖い、自分の足音に被って、静かな住宅街の道に、別な足音が追ってくる。 バスを降り、大通りから外れた道に入ってから気付いた。 初めは気のせいかと思ったが、立ち止まると少し遅れて足音が止む。 瞬間、足早に家路を急いだ。 大きな公園の向こう側に、碧(あお)の住むワンルームマンションがある。 『あと少し』 自分を励ます様に足を運ぶ。 公園は照明が明るく中央に噴水がある。 そこを回り込んで突っ切れば近道なのだ。 街灯だけの夜道の向こうに、公園が明るく浮かび上がって見えてきた時、碧(あお)はホッと息をはき入り口へ急いだ。 公園の階段を駆け降りて行き、低い位置にある広場の噴水の前に、一人の男が居ることに碧は気付いた。   
/981ページ

最初のコメントを投稿しよう!