平凡な日常

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「それに?」 振り向いた蒼谷と目が合う。 「…………何でもない」 「何だそれ」 今回展示されている絵は、蒼谷を描いたと言ったら、この男はどんな反応を示すかしら。 「蒼谷こそ!予定あるんでしょ」 蒼谷は要領が良く、同性異性関係なく人気者だ。 「無いよ 俺だってたまには独りでのんびりしたいしさ」 少し陰を落とし呟く。 「要するに振られたわけね!」 溜息混じりに言う。 「そうなんだよ!皆冷たい奴らばっかでさ 新学期になったら覚えとけよ」 咳を切ったように話し出す蒼谷に、少し引き気味の万里子。 「で、私なのね」 明るい顔で微笑み、 「だって藤堂は嫌な顔しないだろ?」 それは蒼谷が好きだから、少しでも永く一緒にいたいし、口が裂けても言わないけどね。 「そうね……絵画展後になら遊んであげてもいいわよ」 目を見開き、一瞬考えて、 「終わるの夕方だろ?」 待っているのが退屈だと、見に行くと言い出した。 言い終わるや否や、 「駄目!絶対駄目よ!来たら…………………泣くわよ」 既に涙目 びっくりして焦る蒼谷 「絶対に来ないでよ! 終わったら携帯に掛けるから…じゃあ明日ね」 姿が見えなくなるまで立ち尽くす。 「あの噂本当なのか」 蒼谷の消えそうな呟きは、綺麗な夕日に吸い込まれていった。 image=39318952.jpg
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