生徒会会則第十条

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   ***  4回目。亜弥がため息を噛み殺した回数だ。 「不自由はないか」と薫に問いかける皇士郎が、座ってからまだ一度も自分を見ていないことを思うと。  ――もしかして、気づいてる……?  そう思わずにいられない。もちろん、薫とのことだ。しかし、疑問が残るのは、皇士郎がこうやって薫と普通に話していること。  なんでなんだろう。いっそ怒ってくれた方が……いいのに。そうすれば、ちゃんと説明できて、誤解も……。  誤解? 説明って何を? それは本当に誤解なの? 私はなにを説明しようとしてるの?  ――わからない。わかんないよ……。 「皇士郎様」襖の向こうから虎ノ介の声。「夕げをお持ちいたしました」 「ああ、入れ」  すっと襖が開き、虎ノ介が「失礼します」と頭を下げる。膳を持って部屋に入る虎ノ介の後ろに同じように膳を持った女性が続く。 「あ」と亜弥が声を上げた。「前に着替えを手伝ってくれた綺麗なお姉さん」  虎ノ介が置いた隣に膳を置いた女性はくすりと微笑んだ。 「覚えていてくださったのですか」  以前――皇士郎を追いかけて来たとき、とんでもない量の着物を着せてくれた女性。 「覚えてます」亜弥はにっこりと笑った。だって、お姉さんのひとこと、「文庫結びがよいと……」で皇士郎先輩と虎ノ介さんが黙っちゃったんだから。 「虎様のお手伝いをさせていただいております、ふたばと申します」  ふたばはうやうやしく頭を下げた。
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