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「それで、君はここで何をしてるんだい? 退屈なのはさっき聞いたけど」
少女は夜空を見上げながら言った。
「手紙を待ってるの」
「手紙? 誰からの手紙?」
「お父さん。お父さんからの手紙」
「お父さんだったら家にいるんじゃないの?」
「家にはいないの。お父さんはもう二年前から家にはいないの」
一瞬、少女の身体が震えたように見えた。僕はそれでも質問を続けた。
「家を飛び出しちゃったんだ」
少女は「うん」と頷きながら言い「お父さんが言ってた。この家は退屈だって」と続けた。
返す言葉が見つからなかった。言葉を探している内に少女は喋り出す。
「一昨日ね、お父さんに手紙を書いたんだ」
「何て書いたんだい?」
「私は元気です、って。お父さんは元気ですか、って、それと……」
「それと?」
僕は、少女の言葉を繰り返した。次に出る言葉はきっと、重大な言葉だと少し予感がした。
「私は、お父さんが居なくて退屈ですって」
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