第一章 少女と手紙、父親が涙を流す理由

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僕の心が暗い海に沈んでいくようだった。少女にとって退屈とは、寂しいという意味でもあった。 「昨日もここで手紙を待っていたんだけど、来なかった」少女は膝を抱えている腕の間に顎を入れた。 「そうなんだ。でも、ここで待ってても手紙は来ないんじゃないかな? 家にいないと」 少女はしばらく黙ったまま、身体を前後に動かした。僕は返事を待ち続ける。 「嫌なの」 それはとても小さな声だった。意識していなければ聞き逃していた。 「嫌? 何が嫌なの」 「家でずっと待っているのが嫌なの。退屈なの」 「でも、それじゃあ、何時くるかわからないじゃないか。それに、もしかしたら、もう家に届いてるかもしれないよ」 「家にはまだ届いてないよ」少女は顔を上げ前を見る。 「何でわかるの?」 「私、一日中ここに居たからわかるの」 「それで何がわかるんだい?」 「だって、まだ手紙は送られてないから」 「ちょっとよくわからないな。どうして君にお父さんが手紙を出してない事がわかるんだい?」 そう言うと、少女は前に向かって腕を出し指差した。僕は、それを視線で追う。その先には、小さなアパートがあった。 「あそこお父さんの家なんだ」
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