『遠い日の記憶』

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†     「カグラ!」    突然の呼び声に、カグラは慌てて飛び起きる。いつの間にか寝ていたようで、汗をびっしょりかいていた。    ――……また『あの日』の夢か……クソ、だから寝るのは嫌なんだ……   「……何かあったのか?」    一人で考え込むカグラを不思議に思った刺青サングラス、フェイは問い掛ける。   「いや、なんでもねぇ。それより何処行ってた?」   「いや何、ちょいと屋根の上に」   「……捜してたのか」    カグラの言葉にフェイは満足そうに頷く。   「反応は?」   「今の所、無し。この国の『埋葬機関』の依頼も品切れだ」   「じゃ、次の国か。こっから近いのは?」    フェイは懐から簡易世界地図を取り出して眺める。   「ふむ、『ルナヴィス』だな。ココから3日くらいでいける」   「よし、じゃさっさと行こう」    カグラはそう言ってすぐさま立ち上がろうとして、   「待て」    額を人差し指で押されてまたベッドに座り込んだ。   「この所休んでないだろ。何日寝ずに見回りしたと思ってんだ? まずは休め」   「ふざけんな! 休んでる暇なんかない! 私は……アイツを……むぐっ」    叫ぶカグラの口を抑えて、フェイは言う。   「そんな状態で見つけて何になる。戦いたいのならそれ相応の準備ってモンが必要なんだぜ?」    そこまで言って、手を離す。   「……それに、愛しのご主人サマが無理するトコなんか見たくないんでね」    さっきとはうって変わって優しげに言うと、   「…………わかったよ」    ついにカグラは折れた。   「わかれば宜しい。もう夜だ。とりあえず寝な。俺はもうちょっと反応あるか見――」    フェイの服の裾を、カグラはしっかり掴んでいた。   「いつも、一人で寝ると嫌な夢ばっかり見る。だから、その……一緒に……」    顔を真っ赤にしながら、巧く言葉を紡げないカグラ。  それを見たフェイは楽しそうに微笑みながらカグラを寝かせて毛布をかけた。   「ハイハイ、仰せのままに。マイ・マスター」
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