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――と、その時だった。
何かに弾かれたように、半開きで眠そうにしていた男の眼が見開いた。
「……『出た』ぜ、カグラ」
「なに、本当か!?」
カグラと呼ばれた少女が勢い良く立ち上がる。そのせいで食べかけのハンバーガーが吹き飛び――男がそれをキャッチした。そしてそのまま口に運び一口囓る。
「あ、テメー人の食いかけに何してんだ!」
カグラは当然のように怒るが男はまったく聞いてない様子で。
「……む、あんまり美味しくないな。やっぱり俺はハンバーガーとやらが好きになれん」
「なら食うな、返せっ!」
男の手からハンバーガーを取り返し食べようとして……一瞬止まり、
「……フン」
一気に口に詰め込んだ。
そんな様子を見て、男はからかうように一言。
「なんだ今更間接キスなんかで恥ずかしがってんのか?」
「う、う、うるさいっ! ア、アホな事言ってないでさっさとい、行くぞっ!」
はいそうですと言わんばかりに顔を真っ赤にしてカグラは叫ぶと、男の腹にストレートを一発決めてから走って店を出て行った。
「ぐふぅ……全く冗談が通じないね……にしてもいいパンチだカグラ……って、言ってる場合じゃないな。行かないと」
そう言いながら男はカグラの後を追った。
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