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「まぁ、多分だが……まだいるんじゃね? たまに、その『力』の片鱗を感じるからな」
カグラの必死さに押されて、ゼツキは軽く後退りしながら答えると、
「わかった! 恩にきる!」
カグラはそれだけ言ってコイルに視線を向けた。
「ここから出るにはどうしたらいい!」
「えっ……はぁ、あそこの階段です。ひたすら登れば、表の店の裏口付近に出ます。登りきったら扉を開ける前に、モニターがあるので人通りを確認してから出てください。外からだとただの壁にしか見えない仕様になっていますので。入る時は、その逆で」
「……わかった、ありがと」
誰かが何か言う前に、カグラは駆け出していた。階段に続くドアを乱暴に開けると、続けてガムシャラに階段を登る音が聞こえてくる。
「……はぁ、熱くなりすぎだよ、カグラ」
ここにきて初めて、フェイが口を開いた。心底疲れたように、溜め息をつきながら。
「お互い、大変なパートナーをもったわね」
「全くだ」
「オイコラルシエそれどういう意味だ?」
「いいの? あの子追わなくて。早く冷ましてあげないと、どこまでも暴走しちゃうんじゃない?」
激昂するゼツキを完全無視して、ルシエは言った。
「勿論追うとも。ただ、止まってくれるかはわかんないのが辛いね」
「フフ、確かに」
「だから無視すん――」
「……じゃ、追うとするかな。久しぶりだったな、ルシエ、ゼツキ。またすぐ来ると思うから、話はまた今度しよう」
そしてフェイはドアに向かって歩き出す。
「えぇ、わかったわ。いってらっしゃい」
「……じゃぁな」
2人の言葉を背に受けながら、フェイはドアを開けた。
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