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朝から騒々しい通りの中、その男はいた。黒いスーツに黒い髪。顔の左半分の異様な刺青とサングラス。
フェイウルクだ。
「ったく……どこ行ったんだか……」
フェイはその場に立ち止まると、眼を閉じて思案する。
『何処にいる、カグラ』
意思疎通。心の会話。離れた所でも通じあう術。しかし、返事は返って来なかった。
「ハァ、ホントに困ったお姫様だ――」
『それ』は、その時感じた。
巨大な、力。『昏きもの』だけが気付ける、同族の力の波長。
(……こりゃデケェ、これがゼツキの言ってたヤツか?)
力を感じた方を向くと、空が紅く光っていた。――否、紅い光を放つ何かが、空を紅く染めていたのだ。
(!! まさか、あの色……『紅』か!? 『四大霊鬼』……ゼツキ、ビンゴだったみたいだな……最悪だ!)
人込みを掻き分け、フェイは走り出す。
(全く……『紅雷の姫君』とは……厄介な相手に喧嘩売ってくれたぜ……ウチのお姫様も困ったもんだ!)
風のごときスピードで地を蹴りながら、フェイは呟く。
「間に合って……くれよ!」
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