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『ついでに』
「ふ、ぁ~……ん、よく寝た……な」
早朝の太陽が透き通った光を投げ掛けて来る中、カグラは眼を覚ました。
――そういえば……あの日の夢……見なかったな……何で――
そこまで考えたトコで、自分の背後から何かが動く気配がした。慌てて身構えて振り向くと。
「……なんだ、フェイかよ。驚かしやがって」
そこには座り込んだまま壁に寄り掛かって寝ているフェイがいた。なかなか器用な体勢で、スースーと寝息をたてている。
「つかなんでこんな近くで寝てんだよコイツ……」
「それは自分で頼んだんだぜ、マイ・マスター」
「うわっ!? んだよ起きてたのか?」
いつの間にか、フェイは眼を開けカグラの方を見ていた。
「いや何、ついさっきだよ」
「さっきってなぁ……起きてたんなら言えよ。ビックリするだろ。……ん、自分で頼んだ?」
ここまで言って、ようやくカグラは昨日自分で言った事を思い出す。
時間が止まったかのように固まるカグラ。しかし次の瞬間には赤信号の如く真っ赤になると、
「う、うっさいわボケ忘れてたんだ蒸し返すなアホ! そうだ私飯食ってくる!」
猛烈ダッシュで部屋から出て行った。
「ボケにアホとは酷いね。……まぁ、見てて面白いからいいか」
さて、と言いながらフェイも立ち上がる。
――とりあえずここ三日では一昨日の件以外誰も『力』は使っていない。どうやらココも間違い無くハズレみたいだな。……まぁいい。確実に『アイツ』には近付いているハズ。待ってろよ、必ず――
フェイはカラカラと窓を開ける。枠に脚をかけ、そのまま跳躍した。
迫る地面を悠然と眺めながら、幾度となく言った言葉を再度繰り返す。
――殺してやるからな
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