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『そして出会いは訪れる』
デリルを倒してから、軽く5時間は経過していた。だが、未だ目的の村は見えて来ない。バスで1時間の距離とはいえ、こんなガラガラの道をとばしての事だ。歩きで行くにはいささか遠すぎる。まして、何も無いのだ。コンビニも自販機も何も。
「……大丈夫か、カグラ」
手を前にだらりと垂らしながら前傾姿勢でのらりくらりと歩く相方に声をかけるフェイ。無理も無い、カグラはまだ16歳の女の子なのだ。むしろここまでよく歩いた程である。
「だ、大丈夫……だ」
額に汗の珠を浮かべながら答えるその姿に、まったく説得力は無かった。
「意地張るなよ、疲れてんだろ? 無理せんでここらで休もうぜ」
「つ、疲れてない! フェイこそ疲れてないの? こんだけ歩いてんだから」
「別に。根本的に体力が違うね」
その言葉に嘘は無く、フェイの顔に疲れの色はみられない。それが悔しいのか、カグラは少し声を荒げた。
「フェイが疲れてないんなら私も疲れてない」
「……ったく、困ったマスターだよ」
フェイは一言そう呟くと、カグラの背後から腰に手を回す。
「ひゃっ!?」
そのままヒョイ、と軽々持ち上げ、肩に引っ掛けるように乗せた。
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