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そして、彼女は死んだ。
不運にも、自国の兵が撃った銃弾でな。
周りは泣きに泣いたよ。
ある者は彼女を撃った兵に怒り、
ある者は戦争なんかを起こした自国を憎み、
ある者は非情なカミサマに嘆き、
またある者は、自らの非力さに激昂した。
そしてその感情の全ては、表情1つ変えないクピドへと向けられたんだ。
あんなやつが傍にいなければ。
拾ってもらった恩も忘れて。
それ見たことか、表情1つ変えない薄情者。
やはり機械は『機械』でしかない。
日ごとに増していく誹謗中傷の数々。
それを全て受けても、彼の表情が動くことはなかった。
ただな、彼女を埋葬した時、整備士は彼の小さな独白を聞いたんだ。
「ヒトの言う『悲しみ』が、ボクには良く分かりません。
それは、ボクがヒトではないからでしょうか。
ただ、」
自らの胸にソッと手を当て
「ココに、ポッカリと穴が開いた気がします」
そう呟いたっきり、彼はボンヤリと石碑を見ていた。
彼の姿はまるで、道を見失った子どものようだったよ。
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