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誰かが言った。「戦争なんてもう止めよう」と。
誰かが賛同した。「もう人が傷付くのはこりごりだ」と。
1人、2人、賛同者は瞬く間に増えていった。そう、まるで1枚1枚の木の葉の触れ合いが、やがて木全体の木の葉を震わせるかのように。
それから間もなくして、戦争は終わったよ。
戦争を始めるのも人の手なら、終えるのも人の手だってことなんだろう。
彼女の願った平和を、ついに人々は手に入れたんだ。
それは、彼女が死んでから、ちょうど半年目のことだった。
そして、戦争が終結したその日、あの歌声は響かなかった。
平和を願う彼女が、死してなお歌声だけ蘇ったのだ……なんて言う手合いもいたが、ほんの少数派だ。
大多数の人間は、訝しみ、正体を突き止めようとした。歌声の主を突き止め、願わくばお礼を言いたい。感謝の言葉をちゃんと言いたい……ってな。
だがいかんせん歌声の主が今いる場所が分からない。
歌声は戦場を転々としていたからな。
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