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すると、若い整備士が彼女が眠る丘へ行こうと言い出した。
訝しむ周りの人間に、やけに自信たっぷりな表情でな。
『彼』が行くなら、あそこしかないと。
結論だけ言えば、その整備士の言った通りだった。彼はいたよ。彼女の墓石の傍らにな。
彼『だった』ものがいた。
体は傷だらけで至るところからコードが飛び出し、オイルが地面に染み込んでいく。アメジストのようなガラス玉の瞳は、綺麗な青空を写していたよ。
『神の子(クピド)』と名付けられたその電子人形は、始めて彼女と出逢った時の姿で、役目を終えたとばかりに機能を停止させていた。
彼女の墓石にもたれ掛かるその表情は、穏やかだったそうだ。
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