21人が本棚に入れています
本棚に追加
オートマタは実に便利な道具だった。
プログラム通りに動き、余計な情を挟まない。壊れたら替えがきいて、使う側の良心も痛まないからな。
『彼』がそこに棄てられていたのも、要はそういうことなんだろう。
絹のような金色の髪に、アメジスト色の瞳。肌は雪のように白く、中性的な顔立ちは古(イニシエ)の神の使いを彷彿とさせる。
ただ、投げ出された四肢はあらぬ方向に曲がり、傷口からは無機質なコードが地に散らばっていた。
小高い丘の上、生命力溢れる芝生でただ1つ死んでいる存在。それが『彼』だった。
いや、『彼』はきっと始めから生きてはいなかったんだろうな。
死ぬために、死んだまま生まれてきたんだろう。
哀れなオートマタの末路は得てしてこんなものだった。
だから、『彼』が彼女に拾われたのは、本当に運が良かったとしか言えない。
最初のコメントを投稿しよう!