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クピドが起動したのは、暖かな春の日。淡いピンクの花びらが舞い散る頃だったと言う。
「おはよう。自分の名前は分かる?」
柔らかな彼女の口調に促され、クピドは初めて言葉を発した。
「ボクのナマエは“クピド”
ご命令は何ですか? マスター」
彼にとって、命令されることは当たり前だった。元々戦争用に造られた兵器だからな。むしろ考えるという機能が無かったのかもしれない。
だけど、そんな彼に優しく微笑みかけ、彼女は緩く首を振った。
「『人』に命令出来るほど私は高尚な人間ではないのよ? クピド」
「おっしゃっている意味が分かりませんマスター。『人』とは動物分類学上、霊長目ヒト科の哺乳類。直立二足歩行をし、手で道具を使い、大脳はきわめて発達し、複雑な言語をもつ生物を指します。多様な文化を伝承し、現生種は一種だけです」
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