21人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は、自分の頭にインプットされている『事柄』をただ読み上げた。
彼は機械だ。体は金属とコードで造られていて、血液の代わりにオイルが流れる。
心などあるわけがなく、『生き物』ですらない、異端児。
事実を『事実』として話す彼に、だけど彼女は悲しげに微笑んだ。
「それでもアナタは『人間』よ……『神の子(クピド)』」
優しく、悲しく、儚く、脆く、彼女は笑う。
彼には、何故彼女がそんな顔をするのか分からなかったんだろうな。
その日から、ふたりの共同生活が始まったそうだ。
始め、周りは猛反対した。当たり前だ。いくらデータが無いとはいえ、相手は大量殺戮兵器。いつ何時、彼を狙いに他国の人間が攻め入らないとも分からない。そんな『物』を傍に置きたがる人間はそうはいないだろうさ。
だけど、彼女は頑として首を縦に振らなかった。
「この子に何の罪がある」と、
「造ったのも、命じたのも『人』であり、罰すべきもまた『人』だ。この子に課すべき咎はありはしない」と。
最初のコメントを投稿しよう!