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懐刀を持った両手を伸ばし、刃をこちら側に向ける。
カタカタと懐刀を持つ手が震えて止まない。
――でも、痛いのが嫌なだけで、死ぬことが怖いわけじゃない。
華魅は、生きていても何の意味も見い出せない。
震えは止み、自分の表情が冷たくなったのが分かった。
今、絶好の死ぬ機会が設けられているんだ。
・・・・・・なぁんだ、どうってことない。
「・・・・・・っ」
自分の腹目掛けて、力いっぱい腕を引いた。
と同時に、ギュッと目を瞑った。
どすっ。
「・・・・・・・・・・・・?」
お腹に鈍痛が走ったが、本来くるべきはずの激痛がこない。
恐る恐る目を開けると、華魅の手から懐刀が消えていた。
「ったく、フツーやるか?」
呆れたような土方さんの声。
ゆっくりと顔を上げると、懐刀を持った土方さんがいた。
「なっ・・・・・・!」
驚いて口をぱくぱくさせていると、安堵のため息のようなものが聞こえた。
「土方さぁん。この子が本気で腹刺してたら、一体どうするつもりだったんですか?」
総司さんが土方さんを問い詰めている。
でも、今の華魅にそんなこと関係なかった。
「なんで止めたんですか!」
気づけば、そう叫んでいた。
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