其之一

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突然ですが自己紹介させていただきます。 橘 華魅。十七歳。 進路も決まってない。特に夢もない。でも流れのままに任せられない。 やりたくないことなら、あるから。 「橘さん、先生が呼んでたよ」 クラスメートに呼ばれ、我に返った。 昼休みだからといって物思いに耽りすぎたかもしれない。 「ありがとう」 教えてくれた子の名前はなんだったかな。 クラスメートに手を振ると教室を出た。 先生が華魅を呼んだ理由は、多分また進路の話だろう。 華魅は高校二年生。 他の皆はもう進路を決めて、大学や就職に向けて頑張っている。 それなのに華魅はまだ、一人でくすぶっている。 「失礼します」 進路相談室に入ると、そこに先生はいた。 華魅が先生に呼ばれるのは進路の話くらいだから、職員室よりも可能性が高かった。 「おぉ、来たか橘」 先生はいろいろな資料を見ていた。 それだけでなんとなく威圧感があって嫌だ。 「どうだ、何かやりたいことはできたか?」 先生の質問に華魅は苦い気持ちになる。 そんな急にできるわけないじゃないですか。とは言えない。 先生だって仕事だ。 「何か趣味はないのか?」 面倒くさいという気持ちが、なんとなく伝わってくる。
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