其之一

6/20
前へ
/369ページ
次へ
「ここは・・・・・・」 男の人が何か言いかけたとき、襖が勢いよく開いた。 その先には、何やら目つきの悪い男の人が立っていた。 ・・・・・・正直、怖い。 「起きたか」 ジロリと睨まれ、華魅は縮こまる。 この人、放つオーラが刺々しい。 「土方さん、この子面白いですよ」 「あ?」 華魅のパニックをそっちのけで、二人で話しだしてしまった。 「いきなり起きたかと思うと、『ここは天国ですか?』って言ったんですよ!・・・・・・ぷくく」 「はぁ?」 土方と呼ばれた方の男は、再び華魅を見る。 ビクッと肩が持ち上がった。 この人なら、視線で人が殺せる気がする・・・・・・。 「で、てめぇは何者なんだ?」 華魅を見下して言うのは、土方と呼ばれた人。 「た、た、橘・・・・・・華魅です・・・・・・」 怖い怖い怖い怖い! 視線で殺される!! 「へぇ!凄い名前ですね!」 「総司黙ってろ!おい、てめぇ、名前を聞いてるわけじゃねぇんだよ。・・・・・・・・・・・・間者か?」 ・・・・・・かんじゃ? え、嘘。ここ病院だったの? いや、でも、こんな怖い人が医者なわけがない! 「え、あの、その・・・・・・」 もう、意味が分からない。 パニック。ひたすらパニック。 「ハッキリしやがれ!」 土方と呼ばれた人の怒鳴り声と共に、華魅の瞳から涙が零れる。 「なんで・・・・・・そんな怒鳴られなきゃならないの・・・・・・?」
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3134人が本棚に入れています
本棚に追加