第10夜 ~ネオン~

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退院して、半年がたった。 髪もすっかり伸びて 左足を引きずりながらでも 松葉杖なしで歩けるようにもなった。 「やっと18歳になったし ママが働いている小さなスナックで一緒に働いてみる?」 「そうしてみようかな。カウンターだけの小さなお店だし 座って接客できるし、私のような初心者ホステスが勉強するのにはちょうどいいよね」 ただ、そのお店はあと数ヶ月で つぶれてしまうことが決まっていたから、ほんの短期のアルバイト。 あるとき、 「何で足が悪いのに水商売やってるの?」。 と聞いてきたお客がいた。 「子どものころから貧乏で苦労してきたから、お金を稼ぎたくて」 私は正直に言った。 「そうか。頑張り屋さんだね」 その後から 彼は毎日のようにお店に来てくれるようになった。 私はその人を「マーちゃん」という愛称で呼んで慕った。 33歳でブティックを経営していて お金持ちでおしゃれ。 私に、服やブランドの時計 バッグをプレゼントしてくれたうえ スナックの会計のお釣りを全てくれるほどに気前がよかった。 「水商売って、こんなふうに大切にされたりするんだ。すごいなあ…」
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