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夏休みに入った直後。
「これ、役に立ったみたいね」
香穂は暁生の机から参考書とノートを手にした。
「別に」
暁生はいつものように雑誌を読む振りをして平静を装った。
成績は上がり、新品同様だった参考書が明らかに使い古されていた。
その参考書は、香穂が部屋を訪れるたびに蛍光ペンでラインを引き、ノートにはアドバイスを記入していたものだった。
「ガンバったんじゃん」
香穂は暁生に向かって微笑んだ。
暁生に見せた初めての笑顔だった。
その笑顔を見た暁生は一瞬のうちに顔を赤く染め、背を向けた。
それからだ―。
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